芸術と蛇。

美学と心理学と神経科学。それと少しのPythonやってます。

留学の終わり

振り返ればとても短かったような、それでいて長かったような。

もうすぐ留学を終えて帰国します。

本日はラボへ行く最後の日。

ラボの皆とのお別れが、つい先ほど、終わりました。

 

この気持ちをどこかに置いておきたいので、ここに書きます。

とても幸せだった、とても、とても。

このラボとは縁もゆかりもなく、業績だって全然ない私を皆は暖かく受け入れてくれました。

困った時には優しく手を差し伸べてくれたラボの皆には、感謝の思いしかありません。

本当にここのラボを選んで良かった。とても幸せな日々でした。

 

夢を見ているようでした。

尊敬してやまないプロフェッサーや研究員の方と研究の話をしたり、お家に呼んでもらってお酒を飲んだり。

夢とはいつか覚めるもので、私も現実に戻る時が来たようです。

 

ああ、またこのラボに戻って来れる時が来たらいいな。

その時は、私はここの皆に少しでも追いついていたい。

 

ラボメンバーに、心から感謝いたします。

そして、ラボ以外でも、この地で私と仲良くしてくださった皆様ありがとうございました。

あなたたちのおかげで、私の見たもの、聞いたもの全てがとても素敵な思い出となりました。

 

いつか、また会う日まで。

Danke.

 

12. 10. 2017

スマホは害悪…?

さいきん、スマホに関する少し面白い研究が発表されました。

 

www.sciencedaily.com

 

要するに、スマートフォンが手の届く範囲にあるだけで課題の成績が下がるというものです。机の上に置いてても、ポケットの中に入れてても、カバンの中でも、電源を切ってても、スマホを別室においてきた人たちと比べて成績がさがるのだそう。

 

なんかわかる気がします。

なんだろう、スマホがあるだけでそわそわしてしまう感じ。

麻薬並みの中毒性ですよね、スマホって。

確かに何かに集中したりってのは妨げられそうで、課題成績が下がるのも納得です。

 

個人的には、別室に置いてても何か連絡来てないかなとか気になってしまうものですが…むしろ別室の方が(触れないけど)気になる気もします。

 

スマホ使用で子供の成績が下がるということも言われています。人間にとってスマホはあまり良くないのでしょうか…

とはいえ、成績が下がったとしてもスマホで調べれば少々の成績の悪さはカバーできますしね、基本的に暗記なんて必要ない時代になって来ましたし。

 

将来、子供に何歳からスマホを買い与えるか、悩みどころですね。

 

音楽鑑賞モデルってなんでないの?

 

心理学や脳科学の領域において、視覚は聴覚よりも研究がすすんでいる。

これは芸術に関する実験的アプローチでも同様で、絵画受容に関する研究は音楽需要に関する研究よりも数が多い。

 

視覚芸術の研究では、モデリングアプローチによる理論的研究も進んでいる。

つまり、絵画の印象はどういうメカニズムや処理の結果起きるのか、モデルを作ってみようというものだ。こういった理論的モデルは、私もよく研究において引用させてもらっている。

 

実は、私は絵画より音楽の方が好きなので、音楽の研究には理論モデルはあるのかな?と興味を持って検索してみたところ、ちらっと検索した範囲ではなかった。

少し検索してでてこないということは、仮にあったとしてもあまり発展してはないということかなぁと。

 

音楽の理論モデル作ってみたいなぁと思いました。

一度全体を作ってみて、実験を交えつつ少しずつ修正していったら良いモデルになるでしょう。

とりあえずは、これまでの実験結果と、自分の頭で全体的なモデルを作れないかなー

興味とお時間ある方がいれば、そのうち一緒にやってみたいなと思います。

 

 

 

 

浮世絵収集、川瀬巴水

最近訳あって浮世絵の画像を集めています。

浮世絵といえば、

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こんなのがとても有名です。

 

浮世絵をまじまじと見たのは多分中学生とかそれ以来です。

当時は、「あー浮世絵ね、葛飾北斎とかでしょ。なんかのっぺりしたやつ」

くらいにしか思ってなかったのですが、

改めて年をとってからみるとなんかとんでもない事をしてますね、浮世絵師は。

 

同時代の西洋画をある程度観てから浮世絵に戻ってくると、いかに浮世絵の構図が凄まじいか身にしみます。

先ほどの絵であれば、大胆な余白や、そして何より富士山を遠景に用い小さく描く事により波の激しさを生き生きと描いています。

 

びばジャポニズム

ウィーンにはクリムトの作品が多く存在しますが、特に「接吻」を観た時に尾形光琳の紅白梅図を思い出しました。紅梅と白梅が出会ったらこうなるだろうみたいな。

なんかよくわからない事言っていますが、とにかく最近日本美術に衝撃を受けています。19世紀のヨーロッパの画家は日本に出会い、それ以上のショックを受けていたのでしょうね。

 

さて、無知で恥ずかしいのですが浮世絵を調べていく過程で知った、川瀬巴水という新版画家がとても気になっています。

あー日本ですねって感じの浮世絵チックな作品を多く残しています。麦焼酎二階堂のCMみたいな。

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質感は浮世絵なのですが、風景にはしっかりと遠近法を入れ、また陰影もつけているのでいわゆる浮世絵とは違い立体的な配置になっています。また彩色も大胆ではなくどちらかといえば繊細で、これも浮世絵とは大きく違う。

しかし、人は平面で描いているのが面白い。風景画なので主体は風景なのは当然としても、彼の絵では人はサイドメニューですらなく、あくまで背景でしかないのです。彼の作品では人が平面に描かれる事が多く、人より風景の方に「生」を感じさせます。風景は基本的に「在る」ものですので永遠性を孕みますが、彼の作品ではそれと同時に「風景の生」つまり時間の流れを感じます。この永遠性と、時間という刹那性の相反する二つの概念を同時に感じさせるところに私は惹かれています。

 

とまあ新しい画家との出会いがありました。

嬉しい限りです。

 

 

 

 

ウィーン日記

じつは私が留学しているのはウィーンなのですが、アジア系の人が結構います。

その大半は音楽留学で、さすが音楽の都といわれているだけありますね。

 

アジアからの留学生は、音楽>>ドイツ語 >>>>>>>>>>>その他、と私がやっている実験美学だったり心理学だったりの界隈にはアジア系はほとんどいません。

ということで、こちらで知り合ったアジア人は音楽やっている人が多いです。

昨晩は台湾人のバイオリンやってる人と、指揮やってる人と3人で楽しくお話ししてきました。指揮のテクニックについていろいろ教えてもらいましたが、想像以上に奥が深いのですね。

 

私は、音楽の人に対する憧れは強いです。

昔音楽をやっていて、自分ではどうしようもない壁を感じて挫折した経験があります。

いわゆる才能の壁ってやつですね。

普通に生活してたら、プロの音楽家になっていくような人たちとは出会わないのですが、こちらでは普通に友達になることができるのでとても楽しいです。

 

今は私は美術をテーマに実験美学研究をやっていますが、もともとこの分野に入ったときは音楽をテーマにやりたかったことを思い出しました。

とりあえずは美学で、そしてそのうち音楽ができるように頑張って行きたいなと思いました。

 

 

 

留学

実はいま、留学しています。

大学のほうから少しお金を頂いたので、学生時代にいちどはやってみたかった、留学をすることにしました。

どうせいくなら…ということで、実験美学界隈では知らない人がいないほどの世界的ラボにダメ元でお願いしてみたら、あっさりOKして下さいました。

初めてメールをしたとき、留学前に事前に挨拶に行ったとき、死ぬほど怖かった。メールの送信ボタンをなかなか押せなかったし、初めて会った時なんて、緊張しすぎて冷や汗かきまくってました。水でも飲むか?って心配されたのはもはやいい思い出です。

 

いつも論文の中でお名前を拝見して、憧れていたプロフェッサーや研究員の方が目の前に居て、あまつさえ話したり一緒にお酒を飲んだりできるという…今でも夢なんじゃないか、と思ってしまいます。

 

少々の失礼や未熟さがあっても、学生なら許されます。ある意味最強の免罪符です。もし、ここを見ている学生の方がいらしたら、積極的に行ってみると違った世界が見えるとおもいます。

会いたい人に会える、話したい人と話せるというのがアカデミアのいいところだと思うので、少しの積極性を大切にしていきたいです。

 

留学期間は長くはないので、そこが残念ですが、大切に日々を過ごしていけたらと思います。

 

 

 

経験美学という分野

久しぶりの更新となりますね。

私は現在学生で、経験美学や実験美学、神経美学と呼ばれる分野を専門としています。とくに、絵画印象に興味を持って研究をしています。

この分野は比較的新しい学問領域で、日本ではとても知名度が低い分野です。

研究者の絶対数も少なく、国内学会は存在しません。

まぁ要するに細々とやっているというわけです。

 

この分野は私はとても面白いと思っていますし、応用の可能性も非常に大きいと感じています。

しかし、あまりにも知られていないから注目もお金もあつまらない。

もったいないと思います。

芸術作品は、大きく人の心を動かすものです。

なぜ、名画と呼ばれる絵画や、傑作と言われる音楽が、時代を超えてこれほどまでに人々を感動させるのか。

この分野の研究結果が幅広い分野に応用可能であることは容易に想像がつきます。

 

経験美学は、科学的手法を用いて我々の美的経験を探求しよう!という分野です。

よく勘違いされますが、「美とは何か」を科学的に探求する分野ではありません。

芸術作品受容の際に生じる美の意識や情感はどのような要因に起因する/影響されるのか、どのような脳の働きによって生まれるのかを探求しています。

つまり、探求しているのは人の心や脳のメカニズム。

美学の知見も用いますが、美学よりも心理学や神経科学に近い分野です。

(究極のゴールとして、「美とは何か」に近づけたらいいな、というのはあります。経験美学はフェヒナーという心理学者に端を発し、彼の「下からの美学」という言葉で特徴付けられます。実験的にひとつひとつデータを積み上げることで帰納的に「美」というものを推測しようと彼は提案しています)

 

ぼくの専門である、絵画印象の界隈で具体的にはどういう研究があるのか、というと。

・美術館で見るときと、コンピュータ上で絵をみるときの印象の違い

・芸術の専門家と非専門家での印象や視線、脳活動の違い

・芸術作品の印象形成過程のモデル化

・芸術作品鑑賞時の印象と脳活動の関係

こんなことをやっています。

 

ぼくは、絵画印象形成のモデル化に興味を持って研究をしています。

どんな研究しているの?と聞かれて、絵画の印象について研究してると答えると、

え?そんな研究やってるところがあるんだー

という答えが大抵帰ってきます。

 

こんな研究やってるひとがいるんだな、と少しでも知ってもらえたら嬉しいです。