芸術と蛇。

美学と心理学と神経科学。それと少しのPythonやってます。

経験美学という分野

久しぶりの更新となりますね。

私は現在学生で、経験美学や実験美学、神経美学と呼ばれる分野を専門としています。とくに、絵画印象に興味を持って研究をしています。

この分野は比較的新しい学問領域で、日本ではとても知名度が低い分野です。

研究者の絶対数も少なく、国内学会は存在しません。

まぁ要するに細々とやっているというわけです。

 

この分野は私はとても面白いと思っていますし、応用の可能性も非常に大きいと感じています。

しかし、あまりにも知られていないから注目もお金もあつまらない。

もったいないと思います。

芸術作品は、大きく人の心を動かすものです。

なぜ、名画と呼ばれる絵画や、傑作と言われる音楽が、時代を超えてこれほどまでに人々を感動させるのか。

この分野の研究結果が幅広い分野に応用可能であることは容易に想像がつきます。

 

経験美学は、科学的手法を用いて我々の美的経験を探求しよう!という分野です。

よく勘違いされますが、「美とは何か」を科学的に探求する分野ではありません。

芸術作品受容の際に生じる美の意識や情感はどのような要因に起因する/影響されるのか、どのような脳の働きによって生まれるのかを探求しています。

つまり、探求しているのは人の心や脳のメカニズム。

美学の知見も用いますが、美学よりも心理学や神経科学に近い分野です。

(究極のゴールとして、「美とは何か」に近づけたらいいな、というのはあります。経験美学はフェヒナーという心理学者に端を発し、彼の「下からの美学」という言葉で特徴付けられます。実験的にひとつひとつデータを積み上げることで帰納的に「美」というものを推測しようと彼は提案しています)

 

ぼくの専門である、絵画印象の界隈で具体的にはどういう研究があるのか、というと。

・美術館で見るときと、コンピュータ上で絵をみるときの印象の違い

・芸術の専門家と非専門家での印象や視線、脳活動の違い

・芸術作品の印象形成過程のモデル化

・芸術作品鑑賞時の印象と脳活動の関係

こんなことをやっています。

 

ぼくは、絵画印象形成のモデル化に興味を持って研究をしています。

どんな研究しているの?と聞かれて、絵画の印象について研究してると答えると、

え?そんな研究やってるところがあるんだー

という答えが大抵帰ってきます。

 

こんな研究やってるひとがいるんだな、と少しでも知ってもらえたら嬉しいです。